東京高等裁判所 昭和34年(行ナ)61号 判決 1960年9月15日
原告 日本タイプライター株式会社
被告 特許庁長官
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一請求の趣旨
原告訴訟代理人は、昭和三十四年抗告審判第二、五三五号事件について、特許庁が昭和三十四年十一月三十日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めると申し立てた。
第二請求の原因
原告代理人は、請求の原因として、次のように述べた。
一、原告は、昭和三十二年五月六日「キーボードに於て符号化された文字を確認する方式」について特許を出願したところ(昭和三十二年特許願第一一、〇〇四号事件)、昭和三十四年九月三十日拒絶査定がなされ、同年十月三日その送達を受けたので、同月三十一日抗告審判を請求した(昭和三十四年抗告審判第二、五三五号事件)。特許庁は、右抗告審判事件の内容について審理を遂げ審決をしなければならないのに、同年十一月三十日次のような理由により、原告の抗告審判の請求を却下する旨の審決をなし、その謄本は同年十二月八日原告に送達された。
二、右審決の要旨は、次のとおりである。(なお本判決においては特に記載しない限り、特許法、実用新案法は、審決当時施行されていた大正十年法律第九十六号特許法、同第九十七号実用新案法をいう。)
本件抗告審判請求は、昭和三十二年特許願第一一、〇〇四号の拒絶査定を不服として昭和三十四年十月三十一日付でなされたものであるが、右特許願は同年十一月二日付で実用新案法第五条の規定によつて出願変更され、昭和三十四年実用新案登録願第五八九六〇号として受理されているので、本件抗告審判の請求はその目的物が存在しなくなつたものであるから、不適法な請求であつて、その欠缺が補正できないものと認められるので、特許法第百十条、第八十八条の二の規定によつてこれを却下する。
三、原告が、右審決のいうように昭和三十四年十一月二日付で本件特許出願を実用新案法第五条の規定による実用新案登録出願に変更したことは争わないが、右出願の変更は、後に述べるように不法なものであつて、審決は次の理由により違法として取り消されるべきものである。
(一) 本件抗告審判は、拒絶査定を不服として請求されたもので、いわゆる査定系の審判である。これに対して審決は特許法第百十条、第八十八条の二の規定により本件抗告審判の請求を却下するとしている。しかしながらこれらの規定は、いずれも利害の相反する請求人と被請求人とが対立するいわゆる当事者系の事件に関するものであつて、査定系の事件を対象とするものではない。このことは「被請求人」なる字句がそれらの規定中に用いられているのに徴しても明白である。審決がこれら規定を査定事件である本件抗告審判事件に適用したのは違法である。
(二) 本件の特許願について、拒絶査定のあつた後に抗告審判の請求と、実用新案法第五条による変更実用新案登録出願とがなされたことは、上述のとおりである。しかしその変更出願のなされたのは昭和三十四年十一月二日であつて、抗告審判の請求をした昭和三十四年十月三十一日より後のことである。審決がこの後からなされた変更出願によつてそれより先に請求された抗告審判の目的物が存在しなくなつたから、その抗告審判の請求を却下するといつているのは、実用新案法第五条を誤解したもので、主客顛倒も甚だしいものである。
本件抗告審判は、第一審の査定を不服として請求されたものであるから第一審の延長である。従つてその審判の請求が抛棄されるか又は取り下げられない限り、目的物は依然として抗告審判において存続する。これに反して実用新案法第五条の規定による変更出願は、事件の係属の中途において、しかも新たな出願として発生するものである。従つて変更出願が有効に成立するためには、その目的物を対象とする抗告審判の請求が抛棄され、又は取下げられて抗告審判における目的物が存在しなくなつていなければならない筈である。しかるに本件では抗告審判の請求は抛棄も取下もされていないので、目的物は依然として抗告審判に存続している。してみると実用新案法第五条の規定による前記変更出願こそ目的物を欠如した不法の出願であつて、これを正当に成立したものとした審決は、明かに法の解釈を誤つた不法のものである。
なお右の理を詳説すれば次のとおりである。
本件のような場合に先ず第一に見落してならないことは、出願人の利益と意思とが奈辺に在りやの点である。本件についてその経過を見るのに、出願人は特許されることを期待して特許出願をしたものであつて、特許を受けることが出願人究極の目的である。最初の拒絶査定を受けた後先ず査定不服の抗告審判請求をなしたのも、その究極の目的を達せがための出願人の強い意思の表われである。
同一内容の発明考案について、出願人として特許を受けることゝ実用新案登録を受けることゝのいずれを選ぶかといえば、もちろん前者を選ぶのはいうまでもない。拒絶査定を受けた後において、抗告審判請求権を放棄して実用新案法第五条による出願変更を採り、実用新案としての登録に甘んずる如きは出願人において余程の諦めと情勢の変化とのために止むを得ず採る次善の策に過ぎないもので出願人本来の意思は特許を受けることに存する。本件の場合、査定に対する抗告審判請求と変更実用新案出願の二つが合法的になされたものであるが、出願人としては前述のようにもちろん特許を受けることが本意であり、最先に抗告審判請求を行つたのも、その意思表示に外ならない。たまたまそれより後に発生した変更出願なる事実によつて特許出願が放棄されるものとするのは、出願人の真意と利益とを考慮しない推測であつて、拒絶査定のあつた後における抗告審判の請求と実用新案法第五条による出願変更とのいずれを採るかについて出願人の選択権をも確たる根拠なくして事実上制約するものである。
出願人として先ず第一に出願が特許として成立することを希求することは前記したところであるが、本件の場合その希求するところの意思を表示したものが査定に対する不服の抗告審判請求である。出願人はこの審判請求によつてあくまで原出願を特許として成立させる意思を表明したものである。従つてこの審判請求がなされたときを以て、実用新案法第五条による変更出願権こそ出願人により放棄されたものとするのが、出願人の意思に副い、かつ出願人の利益を考慮した最も自然にして順序を得たものである。
原査定に対する不服に関しては抗告審判請求権が存在している。いやしくもそれが権利である以上権利を放棄したことまたはこれを消滅せしめたことの表明が、審判請求人または出願人により具体的になされない限り該権利の放棄又は消滅があつたものとはいい得ない。特許法においても審判請求権の放棄等については特に規定が設けられていることから見ても前記理由は十分裏付けられる。そして本件においては審判請求人において審判請求権を放棄したことについて具体的表示は何等なされていない。実用新案法第五条による変更出願がなされたとしてもそれは単に変更出願の事実があつたというに過ぎず、これを以て出願人が審判請求権を放棄したものというのは根拠のない単なる推測に過ぎない。
第三被告の答弁
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、原告主張の請求の原因に対し次のように述べた。
一、原告主張の請求原因一及び二の事実はこれを認める。
二、同三の主張は、これを否認する。
(一) 審決が原告の抗告審判の請求を却下するのに、特許法第百十条、第八十八条の二の規定を引用したのは、右抗告審判の請求が不適法であつてその欠缺が補正できないものを審決で却下する法文上の根拠を示すためであつて、この点について審決になんらの違法はない。
(二) 原告は昭和三十四年十一月二日付でなされた実用新案法第五条の規定による実用新案登録願は、原特許出願に対する抗告審判の請求が取下げられないのにかかわらずなされたもので違法であると述べているが、右は本末顛倒の議論であつて、これとは逆に特許願拒絶査定不服抗告審判請求の適法性こそ特許出願の存続を必須要件とするものであつて、特許出願がなんらかの事由で消滅すれば、当該抗告審判の請求は適法性を失うに至ることは当然である。
また実用新案法第五条の規定による出願変更は同条に規定する要件さえ満足すれば、原特許出願者又は意匠登録出願者の自発的な意思により自由にこれを行いうるものであり、この出願変更手続前に原出願に対して抗告審判の請求がなされたことによつて、出願変更手続又はこれが特許庁による受理を無効とするなんらの法理上の根拠も存在しない。そして同条の規定による出願変更があつた場合、原出願が存在しないものになることは斯界の通説であり(学者により或は原出願の放棄と説明し、或は原出願はこれを正当ずける適法性を欠き出願変更の手続の完了とともに消滅すると説明している。)、特許庁においても従来から一貫してこの解釈に基いた取扱をしている。
従つて昭和三十四年実用新案登録願第五八九六〇号の出願変更手続が適法になされこれが受理された以上、本件抗告審判の請求は目的物が存在しない不適法なものになるから、これを却下した審決にはなんらの違法な点はない。
理由
一、原告主張の請求原因一及び二の事実は、当事者間に争がない。
右当事者間に争のない事実のうち、本件の審理において特に問題となる事実をそのなされた年月日の順に記載すると次のとおりである。
(イ) 昭和三十二年五月六日 特許出願(昭和三十二年特許願第一一、〇〇四号)
(ロ) 昭和三十四年九月三十日 拒絶査定
(ハ) 同 年十月三日 右の送達
(ニ) 同 年十月三十一日 抗告審判請求(昭和三十四年抗告審判第二、五三五号)
(ホ) 同 年十一月二日 出願変更(昭和三十四年実用新案登録願第五八九六〇号)
(ヘ) 同 年同月三十日 審決
そこで問題となるのは、
(1) 抗告審判請求のあつた後、特許出願者は、抗告審判請求の取下等により、抗告審判手続を終結せしめない限り、実用新案法第五条による出願変更をすることはできないか。
(2) 出願変更ができるとすれば、実用新案登録出願と、抗告審判の請求とは併存するか。
(3) 併存しないとすれば、いずれが残存しいずれが存続せざるにいたるか。
(4) また併存しないとすれば、存続せざるにいたつた手続について特許庁はどのように処置するか。
この諸点に対する解答がそのまゝに本件に対する判断になるから、以下順次に考察する。
二、(1)について
実用新案法第五条は「特許出願者……カ其ノ特許出願……ヲ其ノ出願ニ係ル型ニ付テノ実用新案登録出願ニ変更シタルトキハ其ノ実用新案登録出願ハ特許出願……ノ時ニ於テ之ヲ為シタルモノト看做ス但シ特許出願…ニ付特許……スヘカラストノ査定ヲ受ケタル場合ニ於テハ其ノ最初ノ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ三十日ヲ経過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定しているから、特許出願者がその特許出願を出願にかゝる型について実用新案登録出願に変更した場合、実用新案法第五条に規定する出願日の優先に関する利益を享受するためには、その出願変更が最初の拒絶査定の送達を受けた日から三十日以内にされなければならないことを要件とするものであることは明白であるが、法律はこれ以外の要件、たとえば本件についていえば右拒絶査定に対し抗告審判の請求がなされた場合、その抗告審判手続の終結後でなければこれをすることができないようなことは、なんら規定していない。また実質についてみても、抗告審判の請求といつても、それは拒絶査定を不服とし、抗告審判において再び当初の出願について審理を遂げ自己に有利な査定を受けることを内容とするものであつて、ひとしく特許を受ける権利等当初出願にかゝる請求権を審理の目的物(対象)とし、その本質においては、当初の出願と異るものでないから(このゆえに特許法第百十三条は、拒絶査定に対する抗告審判手続に、審査に関する規定のほとんど全部を準用している。)、抗告審判の請求、従つて同手続が継続しているかどうかは、実用新案法第五条による出願変更ができるかどうか、そしてその効力に何等の影響を及ぼすものでないと解される。
してみれば、本件において(ロ)の拒絶査定の送達を受けた日から三十日以内になされた(ホ)の出願変更は、(ニ)の抗告審判請求にかゝわらず、適法で有効のものといわなければならない。
三、(2)及び(3)について
査定に対する抗告審判の請求があつた後でも、実用新案法第五条による出願変更が適法にできるものと解すべきことは前述するところであるが、この両者が併存すべきか否かについて法は何等の規定をおいていない。しかし特許出願についての拒絶査定に対する抗告審判の請求もその本質においては特許出願と異るものでないことも前項に述べるとおりであるから、この問題は先ず「(5)特許出願について実用新案法第五条の規定による出願変更が適法になされた場合、当初の特許出願と変更された実用新案登録出願との関係はどうなるか」の形において取り上げられる。この点について昭和三十五年四月一日から施行された実用新案法(昭和三十四年法律第百二十一号、以下新実用新案法という。)第八条は、その第四項において、「第一項又は第二項の規定による出願の変更があつたときは、その特許出願又は意匠登録出願は、取り下げられたものとみなす。」と規定して立法上これを解決しているから同法施行後になされた出願変更事件に関する限り、両者の関係を論議する実益は失われた。しかしながら同法施行前の出願変更にかゝる本件については、法律はなんらの規定をも置いていない。
よつて改めてこの両者の関係について考えてみるに、両者がそのまゝ併存することも一応考えられないことではない。(この場合には、特許庁は特許出願及び実用新案登録出願の両者について審理、判断しなければならないことはいうをまたない。)しかしながら実用新案法第五条が「其ノ特許出願ヲ実用新案登録出願ニ変更シタルトキ」といい、変更された実用新案登録出願について、特にこれが出願の日を特許出願の日まで遡らしめ、優先の利益を享受せしめている法意に鑑れば、法は両者を併存せしめて、出願者に特許出願及び特に出願日を遡らしめた実用新案登録出願のいずれか理由あるもの、場合によつてはその両者について権利の付与を受け得べき地位を保有せしめているものと解することは困難であり、また実情よりするも大多数の場合特許出願者はなんらかの理由により、先になした特許出願に固執するよりも、これに代えて実用新案登録を受ける方が有利として、あえて出願変更の挙に出でるものであつて、両者を併存せしめる意思はこれを有しないのが一般である。してみれば当事者の意思においても、反対の事情の明白に認められないかぎり、両者の一方についてのみ審理判断を受くることを求め、他の一方については、出願の放棄によるか取下によるかは別として、少くともこれについて特許庁に対し審理判断を受くべき意思は、これを持続するに至らなくなつたものと解するを相当とする。
そしてこの場合当初の特許出願及び変更された実用新案登録出願の両者のうち、いずれを残存せしめ、いずれを存続せしめないかについて考えてみる。
原告代理人はこの場合、当初の特許出願を残存せしめることが出願人の利益と意思に合致することを強調する。なるほどこれを一般抽象的に論ずれば、出願者にとつて特許権の方が実用新案権の方より、より好ましいものであることはいうをまたない。しかしながら実用新案法第五条の出願変更という特殊具体的の事案について、すでに出願者があえて従来なして来た特許出願に代えて、より権利保護の薄い実用新案登録の出願変更に踏み切つた事実及び出願者のより新らしい意思は実用新案登録出願にあつた事実に鑑れば、後者を存続せしめることこそ出願者の真の意思に合致するものというべく、そして法が前述のように後者について出願日遡及の特別の措置を構じていることも、結局後者を残存せしめる意図に出でたものであることは明白である。してみれば実用新案法第五条による出願変更のなされた場合、特に反対の意思の認められない限り、当初なされた特許出願による法律関係は、出願の放棄又は取下により(なお両者のうちいずれか不明の場合は、当事者の意思は再出願の機会を保有する取下にありとして、これを出願の取下と解すべきであろう)、消滅に帰し、爾後はただ出願変更された実用新案登録出願のみが存在するにいたるものと解せられる。(そしてこの解決は、結局新特許法第八条第四項と同一に帰するものであるが、後者はただ法律上出願の取下を擬制し、両出願の併存、特許出願の放棄等これに反する当事者の意思のせんさくを無用ならしめている。)
以上はもつぱら当初の特許出願と変更された実用新案登録出願との関係について考察したものであるが、それでは次ぎに本件で直接問題となつている変更出願にかゝる実用新案登録出願と抗告審判請求との関係はどうであらうか。
この点について抗告審判の請求といえども、当初出願にかゝる特許を受ける権利を審理の目的物(対象)とするものであることは前述したところであるから、すでに実用新案法第五条による出願変更により当初なされた特許出願による法律関係が、出願の取下又は放棄により消滅に帰するものと解すべき以上、抗告審判の請求は審理の対象の喪失により当然終了し、出願変更にかゝる実用新案登録出願のみが残存するにいたるものと解せられる。
そしてこれを本件についてみるに、原告代理人が強調するにかかわらず、(ホ)の出願変更に当り、原告がなんら反対の意思を有し、これを表明した事実を認めるに足りる証拠はないから、右変更により(イ)の特許出願は取り下げられ、(ホ)の実用新案登録出願のみが残存し、(ニ)の抗告審判請求にかゝる法律関係は存続せざるに至つたものと解せられる。
四、(4)について
特許拒絶査定に対する抗告審判請求後特許出願の取り下げられた場合、抗告審判にかゝる法律関係は、目的物(審理の対象)の喪失によつて当然終了するにいたるものであるから、元来この場合特許庁は抗告審判の請求を却下することはもとより、何等の措置に出でる必要もないことは、あたかも審査手続において特許出願が取り下げられた場合と同様である。ただ右特許出願の取下の効果従つて抗告審判手続の存否について抗告審判請求人が争う場合、特許庁は手続の終了した事実を抗告審判請求人に示せば足りるし、また示さなければならない。そしてこの示されたところに不服ある抗告審判請求人はこれに対し可能な不服申立の方法が許される。そこでこのことを示す方式であるが、しばらく民事訴訟の実務をみれば、裁判所が訴の取下等により訴訟は終了したものと解して爾後何等の措置をもしない場合右取下等の効力について争う原告は裁判所に対し期日の指定を申請し、これに対し裁判所は判決を以て「訴訟は終了した。」旨を宣言するのが、大多数である。従つて特許庁もこれにならえば審決を以て「抗告審判手続は終了した。」と示せばよいであろう。しかしその文言はどうでもあれ、要は実用新案法第五条の出願変更により当初の特許出願による法律関係は当然消滅し、抗告審判手続は継続しないに至つたから、爾後何等の措置をもしないことを示せば足りる。
いま本件についていえば、特許庁は、原告の請求原因事実二のような理由によつて「本件抗告審判の請求を却下する。」としたものである。なるほど右理由中に引用した特許法第八十八条の二の如きは、請求人被請求人の対立するいわゆる当事者系の事件についての規定であつて、出願人の一方のみからなす本件のような拒絶査定に対する抗告審判手続には準用の余地のない規定であることは、まさに原告代理人の指摘するとおりであるが、右審判の理由及び主文を大観すれば、特許庁は「実用新案法第五条の出願変更により当初の出願による法律関係は当然消滅し、抗告審判手続は継続しないに至つたから、爾後何等の措置をもしないこと」を示したものと解するに十分であつて、その用語の当否の如きは多くいうに値しないものであり、(前記民事訴訟の実務といえども、大多数がこの例によるというだけで別に法がこれを定めているわけではない。)また前記引用条文の適否も終局の判断に影響を及ぼすものではない。
五、以上の理由により、審決を違法としてこれが取消を求める原告の本訴請求はその理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決した。
(裁判官 原増司 山下朝一 多田貞治)